2019年11月23日
【英語教育】広大附属福山の公開研究授業を見に行ったら、案の定(いい意味で)打ちのめされた話。
本日、広大附属福山で公開研究授業がありました。毎年お二方が授業をされるんですが、そのうちの一人が千菊先生ということで、とても楽しみにしていました。
(ちなみに、千菊先生は以前記事にさせてもらった、この本を書かれた先生です。)
千菊先生が僕と同じ高1を担当しているということもあり、どのぐらい生徒の力量に差があるのかも見てみたいと思ったのですが……
大火傷しました。(笑)
けど、ものすごく参考になったので、備忘録を兼ねて記事にします!
教科書はCommunication ⅠのLesson8ということでしたが、「やり取り支える基礎スキルの養成とやり取りの実践」というテーマで授業をされていました。
まず机のレイアウトから独特でした。
机一つをペアで挟んで向き合う形で、「コミュニケーションありき」というスタイル。
授業
①B6の紙を配り、与えられた語をリピートで発音記号、空所補充。
その後向かいのペアで確認、答え合わせをかねて生徒が斉読。
生徒が初見かどうか分かりませんでしたが、「やりとりに使える表現」を単語の問題として考え、表現を知り、実際その後で使えるというのは一石三鳥だと感じました。
②すでに配布されていた四コマを使って、お互いに1分でMonologue形式で説明。(英検準一級みたいな形で、四コマはお互いに違うもの)
③その四コマを使ってDialogue形式に置き換えてペアワーク。こんな感じでした。
A: Hi, what's up? You look sad.Aの生徒はやりとりを促す役として、ある程度の流れが書かれたワークシートを持っていました。(そのシートは残念ながら配布資料になかったので、記憶を頼りに上のやり取りを再現しました。抜けやミスはあるかもしれません。)
B:(四コマでの「状況」や「したいこと」を説明)
A: Why did you think so?
B: Because...(「動機」を説明)
A: I agree. What did you do?
B:(四コマであった「解決策」を説明)
A: Hmm... why did you think it worked?
B:(「解決策」のロジックを説明)
A: I see. So, it worked, didn't it?
B: Actually, no. (四コマであった「失敗」を説明。)
A: Oh, that's so bad. What did you learn from the experience?
B: (四コマには直接書かれていない「改善策」や「学び」を提案)
④教科書に出てくる「難しいけど使えたらやり取りが楽になるフレーズ」を日→英で瞬間英訳。
こちらもワークシートで生徒は持っていましたが、画面に日本語を投影して、生徒に斉読で英訳させ、答を表示したらそのまま次の表現へ…とテンポよく進みました。ICT機器の活用とか何とか世間では言われてますが、僕は必要なこと、かつデジタルだからできることをやらないと意味がないと常々思っていますが、そういう観点でも非常に参考になりました。
⑤教科書の本文を、③と同じフレームワークで対話形式で行う。このあたりで完全にやられました。③で使ったプリントを使って、教科書の登場人物と会話をするという設定で再構築するという展開になるとは思いもよりませんでした。
生徒を見ると、教科書の本文を「状況」「動機」「解決策」「解決策のロジック」「失敗」「教訓」という観点で英問英答をしたワークシートを持っていました。
そこで、さっきのやりとりを再掲します。
A: Hi, what's up? You look sad.どの生徒も教科書中の表現を使用し、知的に負荷がかかるやり取りを楽しんでいるように見えました。
B:(四コマでの「状況」や「したいこと」を説明)
A: Why did you think so?
B: Because...(「動機」を説明)
A: I agree. What did you do?
B:(四コマであった「解決策」を説明)
A: Hmm... why did you think it worked?
B:(「解決策」のロジックを説明)
A: I see. So, it worked, didn't it?
B: Actually, no. (四コマであった「失敗」を説明。)
A: Oh, that's so bad. What did you learn from the experience?
B: (四コマには直接書かれていない「改善策」や「学び」を提案)
ペアを替えて行う2回目ではワークシートのプリントを見ずに行う指示が出され、生徒は「えっ!?」というリアクションを最初はしたものの、話を思い出すためにチラッと見る子はいても自力でコミュニケーションを続けていました。
⑥教科書の舞台を使って、そこに住む村人と旅人という新たなロールを作り、自分の言葉に置き換えてより自然なやりとりをさせる。
ここで授業終了。
生徒のやり取りが授業の半分以上を占めていました。各やり取りの最後に指名された生徒が全員が見ている中でやってみますが、どの生徒も大きい声で堂々と発話をしていることから鍛え上げられてるなあと感じました。
何より教科書をこういうコミュニケーションの一場面という視点で分析して再構築し、活動を成り立たせるために色々な教材を使って逆算して授業デザインを組み、そして最後にこの研究授業に当て込むという計画性を考えると本当にゾッとしました。
これに比べれば、僕が日頃やってることなんて児戯ですね。1万回授業してもこのレベルにたどり着かない。
学校の中で授業を繰り返していると、どうしても現状に満足したり、過去の自分を模倣してしまうので、非常によい刺激になりました。(効きすぎて劇薬でしたけど(笑))
見終わった後、心の底から僕の生徒に「ごめん」って本当に思いましたが(笑)、こういう授業を目標にして授業改善をしてみたいと改めて思いました。
そんな千菊先生の本をまた読み返してみます。興味ある方は是非!