2019年08月19日
【科学×英語教育】「ブロック・プラクティス(集中的訓練)」の2倍の定着率を持つ「インターリーブ学習」とその具体的指導例
いよいよ仕事再開です。
家庭で9日間過ごしましたが……まあやっぱり仕事してる方が楽ですね。(楽しいのは両方ですが。)
さて、今日は僕たち教員がやってしまいがちな「ブロック・プラクティス」について確認し、その2倍の学習効率を持つ「インターリーブ学習」について紹介します。
「ブロック・プラクティス」って何?
分かりやすく言えば「特訓」です。
例えばこんなもの。
○シュートの決定率を上げるためにひたすらシュート練習をする
○リスニングを一時間ずっとする
○試験勉強で、1日歴史を覚える
多分こういうやり方って一回はやったことがありますよね。こういうふうにやるべきことを固めて学ぶことを「ブロック・プラクティス」と言います。
「インターリーブ」って何?
ブロック・プラクティスに対して、「インターリーブ(同時平行)」という学習方法があります。
インターリーブは、「複数の情報やスキルを混ぜ合わせて学ぶ学習法」です。
例えばこんなもの。
○パスを受け、ドリブルで突破し、シュートを打つ
○英語で複数の技能を使って学ぶ
○試験勉強で、1日になるべく複数の科目を勉強する
どっちがどれぐらい効率的なの?
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のBob Bjork氏が以下のような実験を行っています。
Bob Bjork氏はさまざまなスタイルの美術作品を画面に表示して、被験者にそれぞれの特徴を教えるという実験を行っています。一方のグループにはブロック・プラクティス形式(ある画家の特徴を示す6つの例を続けて見せてから、次の画家の例に移る形式)で画像を見せ、別のグループにはインターリーブ形式(複数の画家のスタイルの例を混ぜて見せる形式)で画像を見せます。その後、2つのグループの被験者に、先ほどは見せていない絵を新しく示し、それがどの画家のスタイルだと認識できるかどうかテストします。すると、インターリーブ形式のグループがたいてい60%前後の点数を取るのに対し、ブロック形式のグループの得点は30%前後にとどまるのです。(下線は筆者)
つまり、インターリーブ学習はブロック・プラクティスの2倍の効率性があるということです。インターリーブ学習に効果がある理由についてBjork氏は、インターリーブ学習は人間の持つパターン認識(パターンと同じものと違うものを見分ける能力)を利用しているからだと述べています。
例えば僕たちが現在形について理解するには、現在形進行形や過去形との違いを知らないといけませんよね。ひたすら現在形について穴埋めとか英作文をやっても、時制や態に意識が行かなければ意味がありません。
しかしここで恐ろしい事実があります。同述した実験の協力者のうち、70%もの人が「ブロック・プラクティスは最も効果的な学習法である」と答えていたのです。
ということは、こういった科学的事実をもし教員が知らなければ、30%程度の学習効率しかないブロック・プラクティスを生徒に推奨し、教えられた生徒が教員になったり親になって、またブロック・プラクティスで教えて…という負の連鎖が続いてしまいます。
この連鎖を断ち切れるのも僕たち教員しかいないのです。
英語授業や学習にインターリーブをどう活かすか
メンタリストのDaiGoさんは高校時代に問題集をすべて一ページずつ破り、色んな科目でごちゃまぜにして山を作り、数学→化学→英語→古文…みたいに上から順番にランダム配列で解いていったそうです。(友人からは「気が狂ってる」と言われたそうですが。(笑))
実際にできそうな形で考えると、例えば以下のようなやり方が考えられます。
○授業一時間の中でなるべく複数の技能を使うデザインを組む
○知らないことと知っていることを組み合わせる
例えば、リスニングした文章を理解してそれをそのままスピーキングで人に伝えたり、新出の単語や文法事項を既出のものと混ぜた英作文をさせたり、という方法が考えられます。
もちろん何かを学ぶときにはある程度まとまった時間は必要だと思いますが、ずーっと同じことばかりやっていても効率は良くないことは知っておくとよいと思います。
生徒の集中力を維持させつつ、色々な刺激に晒す方法を考えていきたいですね!